シューバッハは静かに暮らしたい

シューバッハの特殊能力…それは「聴いたもの」を何でも「分析する」能力ッ!

「君の名は。」感想(ネタバレ有り)


久しぶりのブログが映画についての感想でアレなんですが、思うところが沢山あったので独り言を書いてみようと思います。


タイトル通り、今絶賛上映中の「君の名は。」を見てきたのですが、これから書く感想にはもちろんネタバレを含みますので、まだ見てない方には読まないことをオススメします。









1回しかまだ観てませんが、
結論から言うと、この作品はとてもとてもとても良かったです。
個人的にここ最近見たアニメの中で1番好きかもしれません。
しかし僕の性分で、好きなもの(映画に限らず)は必ず
「こういうところが良かった、でもこういうところは良くなかった」
という点をハッキリと自分で分析して理解してから、その上で全部ひっくるめて好き、と言いたいので、少し批判的な内容も含むことになります。
でも繰り返しますが、僕はこの作品が本当に良かったと思っています。
決して叩いてるわけではなく、曲を分析するような気分で書いているだけなのでそこんところお願いします。



<良かったところ>
・ストーリーが二転三転しつつも見事にハッピーエンドで終結した
・細かい所作の積み重ねが各キャラクターの人間性を作り上げていた
・音楽が挑戦的だった
・(言うまでもなく)作画が良かった



ストーリーに関してはあまり説明も要らないと思います。作品を観たならその素晴らしさは体感出来たと思います。
強いて言うなら終盤で三葉が父親を最後の説得に言ったシーンでぶん殴ったりすれば気持ち良かったのになと思いました。
ああいう大人は歯食いしばって修正してやれば良いんです(修正パンチ👊

細かい所作がキャラクターを作り上げていたのはジブリに近いものを感じました。
物語冒頭から一貫して三葉は自分の髪を触るのが癖だったり、瀧と三葉が山頂で初めて会えた時に瀧はあえて抱きしめなかったり、心情から来る行動が魅力的なキャラクターを確立させていました。
特に「髪を気にする三葉」というキャラクター性は、後々髪を切ったシーンでの衝撃やショックもより大きいものとなるので、とても効果的だったと思います。


作画の良さは言うまでもなく、
やはりこの作品の目玉は音楽の面白さでしょう。
RADWIMPSの挿入歌が随所に流れ、ファンにとっては堪らない演出だったのではないでしょうか。
流れ出すタイミングも絶妙、観ている側が圧倒されるくらい豪快なサウンドで、劇伴音楽にしてはとても挑戦的で面白かったです。





<良くなかったところ>
RADWIMPSじゃなくても良かった


おいおいお前さっき音楽ベタ褒めしてたやんけ!w
とツッコミが入りそうですが、この作品は良くも悪くも音楽の力に左右される場面が多かったな、というのが僕の感想です。
あと僕自身がRADWIMPSを嫌いなわけでもありません。
今から7,8年前くらいにドハマりして毎日狂ったように聴きまくってました。
今でも好きなバンドです。

まず根本的な問題として、劇伴音楽と一般的なアーティストの音楽というものは、全く別物です。
なぜなら曲を作るプロセスや考え方が違うからです。
劇伴音楽はストーリーやシーン、背景や心情に合わせて曲を作ります。その上で作曲家それぞれの個性やサウンドを盛り込んでいきます。
しかしアーティストは自分の音楽を表現することに長けた人達です。劇伴音楽のようにシーンに合わせた曲を書こうとしても面白くない曲が生まれてしまったり、逆に欲しくないところでどうしても抑えきれない個性が曲に溢れてしまったりします。
どちらが良い悪いというのではありません。
音楽にサカナクションを起用したバクマン。という映画もありましたが、やはりアーティストを音楽に起用するのは難しいなと感じました。
もちろん今回の作品も音楽が悪かったとは思えません。
けれども見終わってみると、「この作品はRADWIMPSじゃなきゃダメだった」と思えるほどのハマりっぷりは感じませんでした。
良かったけれどもベストではなかった、といった感じです。

具体的に言うと不可解だったのは、
日常シーンで使われていたピアノと弦のインスト曲。(伝われ
この曲は劇中で3回くらい使い回されていたと思うのですが、誰かのテーマ曲であるわけでもなし、キャラの心情に寄り添う音楽でもなし、てかこれ本当にRADWIMPSが作ってんの?って感じでした。

もうひとつあります、
三葉の中に入った瀧とてっしー達が変電所に爆弾を仕掛ける作戦会議を始めるシーンの曲です。
曲単体として聴けばめちゃくちゃカッコいい曲だったと思います。
でも完全に凛として時雨のパクりみたいなサウンドでした。
僕が聴きたかったRADWIMPSはこれじゃありません。ストーリーに個性が潰されてしまって残念です。
「ます。」のイントロでも流したほうがまだ良かったと思います。


そして肝心の歌。
歌に関しては流石にRADWIMPS、という感じがしました。
しかしどうでしょう、主題歌含め5曲もの曲が全て必要だったでしょうか?
5曲も使ったわりには伝えたいことが何だったのかイマイチ分からなかったことです。
逆に言えば5曲も使うから何を伝えたいのか分からなくなってしまったとも思います。
ストーリーには幾つかのテーマが内包されていました。

・瀧と三葉の入れ替わり
・2人の名前
・「つなぐ」ということ

等が挙げられると思います。
しかしそれぞれのテーマを伝えるために5曲もの歌が必要だったとは思えませんでした。
結果としてストーリーを最後まで観ればこの作品が伝えたかったテーマを自分の中で補完出来たので良かったですが。


長くなりましたがまとめると
「普通の劇伴音楽の中でRADWIMPSの曲を少し多めに使ってみた」
くらいの印象です。
RADWIMPSの良さも失われ、ストーリーとしても音楽を活かしきれなかった、そんな結果になってしまったと思います。


ここまで文句を垂れておいてなんですが、今回のような音楽の在り方は嫌いじゃないし、むしろ好きです。
でも僕個人の好みと作品の良し悪しはまた別のお話、というわけです。

(ミュージカルは別として)普段の劇伴音楽の中で歌が何曲も使われない理由がよく分かる作品であり、
それと同時に歌はまだまだ人の心に強く干渉できる可能性を秘めているな、と感じさせてくれた作品でした。








シューバッハ(@schu_bach)